合同会社の設立を検討されている方へ
合同会社は、2006年5月に会社法の施行に応じて、新たに設立できる様になった会社形態であり、現在、会社法施行から10数年が経過し、世間的にもが定着してきました。
そこで、近年、どの程度の件数の合同会社が設立されているのか、法務省による法務局統計により、設立登記の件数をまとめてみました。
合同会社と株式会社の年度別設立推移(占有率)は次のとおりです。
2015年度 合同会社22,223件(19.9%) 株式会社88,803件(79.8%) 総計111,238件
2016年度 合同会社23,787件(20.8%) 株式会社90,405件(79.0%) 総計114,343件
2017年度 合同会社27,270件(22.9%) 株式会社91,379件(76.9%) 総計118,811件
しかし、合同会社の知名度があがってきたとしても、合同会社に、どのようなメリット・デメリットがあるか、疑問を持つ方も多いかと思います。
そこで、次に、合同会社のメリット・デメリットについてまとめてみました。
合同会社のメリット
(1)会社設立費用が安い
合同会社の場合、登録免許税6万円で設立することが可能です。しかし、株式会社の場合、登録免許税15万円と定款承認5万円で、20万円もの設立費用が掛かります。つまり、合同会社の方が、14万円も安く設立できます。さらに、合同会社は、設立登記に必要な手続も少ないため、速く簡単に設立できます。
(2)会社運営上の法定手続きが少ない
合同会社の場合、決算公告義務がないため、公告費用が掛かりません。また役員の任期がないため、重任登記が必要ないので、登記費用が掛かりません。さらに株主総会がありません。しかし、株式会社の場合、決算公告義務ばあるため、公告費用が掛かります。また役員の任期があるため、重任登記が必要な為、登記費用が掛かります。さらに株主総会の開催が必要となります。
(3)経営の自由度が高い
合同会社は、定款で規定できることも自由度が高いです。例えば、合同会社では利益の配分を、出資比率に関係なく社員(出資者)間で自由に決めることができます。また株主総会がないため、迅速かつ簡単に経営上の意思決定が行えます。
合同会社のデメリット
(1)合同会社の知名度が低い
合同会社は、株式会社に比べると知名度が低いです。そして、知名度の低さがもたらすデメリットも考えられます。また取引先によっては、取引が株式会社に限定される可能性もあります。さらに合同会社の会社代表者の名称として、代表取締役ではなく、代表社員となります。
(2)社員(出資者)が対立した場合のリスク
社員(出資者)と業務執行者が同一の為、社員数が多いと利益配分を巡る対立が起きた場合、会社の意思決定や業務執行にまで影響を及ぼす可能性が高いです。その為、少人数の社員構成となる小規模な会社となる傾向にあると思います。
(3)資金調達方法も限定される
合同会社は、資金調達方法として、増資を選択することが難しく、さらに、上場することは出来ません。その為、投資家などから、大掛かりな資金調達をする予定がある場合、合同会社は適していません。
以上のことから、合同会社は、社員(出資者)が少人数である中小企業・小規模事業者に適した側面を多く持つ会社形態であることがおわかりになると思います。しかし、合同会社のデメリットの影響以上に、そのメリットの影響を多く享受できるのであれば、中小企業以外でも合同会社の会社形態を選択することがあります。
そこで、次に、具体的に合同会社の会社形態を選択している会社のうち、有名企業では、どういう傾向があるのかを見てみましょう。
合同会社の会社形態を選択している有名企業
有名企業でも、合同会社を選択しているところが数多くあります。具体的には、西友、Apple Japan、ユニバーサルミュージックなど、主に外資系の企業の日本法人を中心に有名企業でも多くの合同会社があります。
外資系の日本法人では、会社運営上の法定手続が少ない合同会社が選ばれる傾向にあるようです。さらに、合同会社を選択するのに適している具体的なケースとは、どのようなケースになるのでしょうか。
合同会社の会社形態を選択する適否
合同会社に適している場合
下記のようなケースは合同会社設立に適していると考えられます。
・BtoCのビジネスで、株式会社か合同会社かはあまり関係ない方
・法人設立による節税目的のみを享受したい方
・許認可など事業遂行上の理由のみで法人格が必要な方
・株主総会や決算公告など会社運営上の法定手続をしたくない方
合同会社に適さない場合
下記のようなケースは合同会社設立に適していないと考えられます。
・投資家等からの増資による資金調達を検討している方
・近々、上場を目指す方
・法人設立時、出資者の数が比較的多い方
・BtoBのビジネスで、株式会社でないと事業遂行上で支障がある方
以上のケースを参考に、会社形態を選択する場合、合同会社を選択すべきか否かについて、ご検討してみて下さい。
なお、合同会社の会社形態の選択について、今まで記載してきた内容でも判断が出来ない方については、下記の方法も考えられますので、ご参考にして下さい。
株式会社への組織変更も可能
まず、合同会社の会社形態で事業を開始した後、ある程度、事業規模が大きくなってから株式会社に組織変更することもできます。この会社形態の選択方法は、事業の状況の変化に合わせて、会社形態を変更することもできますので、登記手続の煩雑さとコスト負担を考慮の上、検討する事もお勧めいたします。