資本金の決め方
会社設立する際、事業目的、機関構成、決算期、会社設立日、役員人事、役員報酬など、様々な項目を決定しなければなりません。その中の一つとして、資本金があります。
資本金とは、出資者が会社に拠出した資金です。以前、旧商法では、最低資本規制度が規定されていて、株式会社は資本金1,000万円以上、有限会社は資本金300万円以上が必要でした。しかし、2006年4月から施行された会社法では、最低資本金制度が撤廃され、資本金1円でも会社設立できるようになりました。
そのため、資本金を決める際、何を基準に決定すれば良いか、より不明瞭となってしまいましたので、会社設立時、資本金の決定が悩みの一つになると思います。
そこで、今回、資本金の決め方における考慮すべき事項について、ご説明させて頂きます。
資本金の決め方における考慮事項
資本金の決め方における考慮事項として、
(1)税金等のコスト
(2)設備資金と運転資金
(3)資金調達
(4)取引先との取引条件
の4つの要素から検討することをおすすめします。各要素について、具体的な説明を以下に記載します。
(1)税金等のコストから検討
会社設立に際して、資本金額によって支払う税金の金額が異なります。今回は、資本金1,000万円を分岐点とした内容について、ご説明いたします。
《1》消費税
資本金1,000万円未満であれば、会社設立から2期に渡って、消費税の免税措置が受けられます。
《2》法人住民税
東京都23区(従業員数50人以下)の場合、資本金1,000万円以下であれば、均等割の金額が、7万円ですが、資本金1,000万円超であれば、18万円となります。
《3》登録免許税
株式会社と合同会社の会社設立時に要する登録免許税は、資本金の1000分の7です。そして、株式会社の場合、資本金に1000分の7を掛けて、その額が15万円以下であれば、15万円になります。また、合同会社の場合、資本金に1000分の7を掛けて、その額が6万円以下であれば、6万円になります。
仮に資本金が1,000万円だとしたら、株式会社では、15万円となり、合同会社では、7万円となりますので、会社設立形態により、登録免許税が異なる事になります。
(2)設備資金+運転資金から検討
設備資金と必要最低限の運転資金が賄えるくらいは資金を用意しておきます。そこで、一般的には、3か月~6か月分の運転資金を賄う前提で資本金を決定されています。なぜなら、何も売上があがらなくても、会社を最低3か月~6か月は維持できる額を準備するためです。例えば、会社設立の初期費用に、賃貸オフィスの保証金やパソコン購入費用など、150万円が必要だとします。そして、最初の3ヶ月で運転資金が100万円必要だとすれば、250万円を資本金にするという考え方です。その間に、将来的に売上を上げられるように、地道な営業活動などに注力する事になります。
(3)資金調達から検討
資金調達として、創業融資を検討されると思います。創業融資は、創業間もない会社を対象とした融資であり、無担保・無保証で低利の融資を受けられる可能性があり、これから起業を検討される方々にとって、活用したい融資であると思います。この創業融資を検討する際、日本政策金融公庫の創業融資や信用保証協会の制度融資を検討することをお勧めします。
そして、融資申請する場合、融資限度額は、例えば「自己資金まで」など、自己資金の大小によっても影響を受けます。つまり、自己資金である資本金が大きい方が、より多額の融資を受けることに寄与するのです。したがって、創業融資を検討する場合、必要な融資額を考慮した資本金にする必要があります。また、将来的に融資を検討する場合、この点も考慮して資本金を決めるようにしましょう。
(4)取引先との取引条件から検討
取引先との関係も考慮した上で、資本金を決める必要がある場合があります。例えば、資本金の大小が、取引先の取引条件である場合や仕入先として大口契約を結ぶ条件である場合など、取引先との関係で、ある程度多額の資本金を設定する必要があると思います。資本金を多額にすることで、信用力を高め、より良い条件の取引契約締結の可能性を高めます。
しかし、取引先との関係を考慮して資本金を考えなくても良い場合やBtoCのビジネスを行うなど、資本金が取引や顧客獲得にあまり影響しない場合は、資本金を多額にする必要はありません。
まとめ
資本金の決め方は、上記のように様々な要素を考慮して、検討する必要があります。なぜなら、資本金の金額によっては、会社設立後、様々なメリットを得られますので、会社を効率的に経営することに寄与します。そのため、資本金を税金などのコスト面のみを考慮する安易な決定をせずに、起業時に事業計画書を作成するなどして、戦略的に資本金の設定について検討することをおすすめします。